素敵な少年野球ライフ⁉③/5

スポーツ

Baseball Elegy with Sons
 ~いま振り返る、親おやドキュメント~

地元の小学生野球チームから中学生のクラブチーム。
子ども3人トータル11年、野球少年の親を経験したおやじの奮闘記です。
「あるある」と笑ってください。
「わかるわかる」と泣いてください。
こいつが少年野球親のドキュメントです。

寄生お母さん

 試合の時などは、移動が生じる。遠方の場合も当然ある。
 「車出し」当番の人は、選手を乗せていく。
 それ以外の人は、自分の車で行くわけだが、その手段を持たない方がいらっしゃる。

 例えば、車を持ってない人。
 免許を持ってない人。(ペーパードライバー含む)
 また、車はあるが、免許を持っている旦那が単身赴任だとか。
 そういう奥さんは、『』を探す。
 不思議とこういう人は、普段からあまり好かれていない。(私の偏見です)

「ねぇ、来週乗せてもらっていい?」
「・・・あ、はい、いいですよ」
 断るわけもいかず、仕方なく受け入れる。
 というか、断れない人を探し出して『寄生』してくる。
 申し訳ない、という感じではなく、ずかっと聞いてくる。
 巧妙に、かつ力技で。(なので断りにくい)
「○時に○○に来て」
 家の真ん前を指定する。またこういう人は家が遠いうえ、車が停めにくい。
「子どもの弁当作れなかったのよ。コンビニ寄ってくれない?」
「帰り、○○に寄って」
「たばこ吸っていい?」
「来月も乗せてもらっていい?」
 と、こうなる。

 常習的に足(車)が無いなら、そもそも交通機関を利用する気は無かったのか?
 子どもが入部するときから、人の車をあてにしていたのか。
 他の父母の車は、無料タクシーではない。

 いろんな家庭の事情があり、やむを得ない時だってある。
 助け合いも大切。
 だからこそ、
 交通が不便な場所の時だけにするとか。
 たまにはガソリン代としていくらか出すとか。(お菓子とかでもいいし)
 少しでも遠回りにならないよう、車が止めやすいところまで自分から出ていくとか。
 あつかましいと思われない工夫は、いくらでもある。
 それをやらないから、陰で『寄生虫』などと言われるのだ。

 中学のクラブチームの時の話。
 ある部員の母親が、別のお母さんに「試合の日乗せてってー」と頼んできた。
 当日家に迎えに行ったら、母親、兄(大学生)、そしてなんと、その兄の彼女までもが待っていたという。きゃー!

子どもが褒められた時の答えに、正解はない

 これは、私が長年『父親』をやったなかで、発見したことである。

 たまに、我が子を褒められる時がある。
 少年野球の場面では、あいさつ代わりに、相手の子を褒めることは多い。

 「○○君、守備範囲広いですね」
 「○○君、スイング速いですね」
 「○○君、球が伸びてますね」
 「○○君、いやー上手になりましたね」

 こんな感じ。
 野球少年のお父さんたちなので、褒める内容も具体的である。

 私はこういう場合、やや強めに否定することにしている。
 「とんでもない」「いーえ、いーえ」
 しっかり手を振って否定する。本気で「そう思っていないよ」とばかりに。
 もちろん、うれしい。まんざらでもない。
 だが、認めたら終わりだと思っている。
「社交辞令を真に受けて」と陰で笑われたくない。

 しかし、否定しないお父さんも少なくない。
 「確かにそうですね」
 「やっと練習の成果が出てきました」
 「気づいていただき、ありがとうございます」
 「よく言われるんですよ」

 えー!っていう感じですが、そんな方々を横目に、正解は何だろうと考える。
 
 自分の子をお褒めいただいた時・・

  ①否定すると 
   → 自分の子を評価しない薄情な父親

  ②肯定すると
   → 親バカ

 つまり肯定しても否定しても、よく思われない。

 したがって、『子どもが褒められた時の答えに、正解はない』のである。

 たまに、正面からこちらの子のダメ出しをしてくる方もいらっしゃる。
 そういう人は、すごく愛情を持っていただいているか、まったく人の心が読めないかのどちらかである。(主に後者だろうが…)

 ついでですが、自分の子ががんばったとき、親として、しっかり褒めてあげましょう。
 ただし、他人の目に触れないところでね。

野球小僧

 時々、耳にしませんか?野球小僧って言葉。

 「あいつ、野球小僧だからね」
 ・・・?
 野球している子どもはみんな野球小僧?
 いいえ、違います。
 野球が上手=野球小僧?
 いいえ、違います。
 野球小僧は、野球小僧なのです。

 野球小僧は、野球が上手です。
 でも、野球が上手な子が全て野球小僧ではありません。

 野球小僧は、ものすごく野球が好きです。
 なんとなく聞かなくてもわかります
 ほっといても、野球をします。
 ほっといても、野球が上手になるため練習します。
 当然のように、プロ野球中継を見ます。
 プロ野球選手に詳しいです。そもそも野球に詳しいです。
 生活と野球が結びついています。当たり前のように。

 野球以外のスポーツもできます。
 でも、好んではしません。
 野球しかしません。
 監督、コーチのなかには、この野球小僧であることを重視する方もいます。

 うちの子3人は、野球が好きだったと思います。
 三男は中学生で、硬式クラブチームに入り、エース候補にもなりました。
 親バカですが、投げるのも打つのも非凡なものがあったと思います。
 でも、野球小僧ではありませんでした
 (それは何となくわかりました)

 あいまいな説明で申し訳ない。
 でも、長年、少年野球に携わると、相手チームの子でも、なんとなくわかるのです。
 「ああ、あいつ、野球小僧だな」と。

バレル理論で打つ子ども

 大谷翔平をはじめ、日本人が海を渡って移籍することが増え、メジャーリーグの試合が身近なものになった。

 そんな中、聞いたことがあるだろうか。
 『フライボール革命
 『バレルゾーン
という言葉。

 詳しくは述べないが(そもそも詳しくないが)、打球速度に応じたヒットや長打になりやすい打球の角度をいう。
 いい加減な言い方で申し訳ないが、昔から教えられてきた『上から叩け』は古いという理論。

 だが、私は見た
 上から叩けの時代に、『バレル理論』で打つ子どもを!(ぎゃー)

 練習試合の相手チーム、その子は3番を打っていた。
 左打席に入る。
 まず、構えが違う
 ガッチリ脇を締め、バットを頭の後ろに垂直に立てる。
 背筋もピンと立てる。腰は割らない。
 その姿に、我がチームの野球経験者のお父さんさん達が(ん?)という感じで見入る。

 自慢になるが、その時ピッチャーだったうちの三男は、球は速い。特に高めを長打されたことはほとんどない。
 たが、打席の彼は、悠然と低めを見送る。
 まるで(自慢の高めを投げてこいよ)と言っているかのように。

 そして投げた高めの速球。
 脇を締めたままトップをつくり、ギリギリまで呼び込んだ投球を、まるで真上に向かって打つようなスイングではね上げる。
 打球はライトへ高々と上がる。
 一瞬ライトフライかなっ思ったが、打球はファールゾーンのかなり遠くに停めている車の屋根に当たって跳ねて行った。

 何という飛距離!
 グラウンド全体がざわめく。
「あれって」
 野球経験者のお父さんが言う。
「何だっけ?バレル理論?
「そうそう」
 別のお父さんが反応。
「いやー、子どもであれをやる?」
「すごいですね」
 我がチームのお父さんたちが盛り上がる。

 どうやら、フライボール革命なんて言葉が聞かれない時代から、バレル理論というものは、野球界にはあったようだ。
 単純に高い打球を打てば、打球は飛ぶという考え方らしい。実践する日本人は少なかったようだが。

 しかし、そんな打ち方、そのチームの指導者がよく認めてるなぁと、その時は感心した。
 親がよほど熱心だったのだろう。
 でも、なんだか野球の奥深さを知ったような感じで、今も記憶に残っている。
 きっとその子の父親は、10年後、ヤンキースのジャッジを見て「ほら、見てみろ!」と叫んだだろう。
 異端とは、ときに時代の先駆けである。 

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